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ワクワクする事しかしない! ピンチでも柔軟な発想でネクストチャレンジを! 孝志丸水産 浅尾大輔氏の挑戦【TOP’S RELAY】

2021年08月05日(木) 冊子掲載
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「職場は海」はかっこいい!

サラリーマンから転身3年で天皇賞最年少受賞!!

今回の「TOP’S RELAY〜三重の未来を担う経営者に聞く〜」のゲストは、前回のゲスト、株式会社浅井農園五代目、代表取締役の浅井雄一郎さんからのご紹介で、孝志丸水産代表の浅尾大輔さんにお話を伺いました。


▲待ち合わせは「海」!

浅尾さんは大阪市出身。前職は人材派遣会社のマネージャーをされていましたが、12年前、結婚を機に奥様の実家のある鳥羽市浦村に移り住み、『自ら作って育む仕事への憧れ』から奥様の親戚が営む牡蠣養殖の仕事に転身しました。

『職場は海』というのがかっこいいなと思ったんです」と浅尾さん。


▲お話を伺う前に船で牡蠣の養殖場に連れて行ってくれました。

平成22年に若い漁師を中心として浦村アサリ研究会を発足。アサリの養殖方法を研究する中で、長年廃棄が問題になっていた牡蠣殻を再利用する画期的な養殖方法を確立したことが評価され、平成25年に三重県知事賞・農林水産大臣賞を受賞、その後、最高賞の天皇賞を史上最年少で受賞。画期的な技術を実用新案で守ることなく情報公開し、全国各地の漁業関係者から注目を集めています。

今回は「ワクワクする事しかしない!」と言いながら、ピンチでも柔軟な発想でネクストチャレンジをし続ける浅尾さんにお話をお伺いしました。

全国から注目される浦村アサリ研究会の取り組み

三重県鳥羽市浦村地区は、全国有数の牡蠣生産地です。浦村の牡蠣養殖業者はおよそ60軒、三重県の牡蠣生産量の6割以上を占めています。また、浦村に足を運んでいただき、牡蠣の生産地で漁業者自らが収穫した牡蠣を食べてもらいたいとの思いから、シーズンになると多くの養殖業者が直営の牡蠣小屋で牡蠣を提供しており、その人気は年々高まっています。


▲牡蠣を養殖するいかだに到着!


▲実際に引き上げて見せていただきました。
 

▲ロープにはびっしりと牡蠣が!今年の出来は上々なんだとか!

ですが、牡蠣養殖も生き物相手の仕事。2011年の3.11東日本大震災の影響で海が荒れ、浦村の牡蠣養殖も多くの被害に遭いました。そして、それを機に牡蠣養殖以外で収入を得る手段を積極的に研究しようと、浅尾さんを中心に若手の牡蠣養殖業者が集まり浦村アサリ研究会を発足することになったのだそうです。

日本のアサリの収穫量は年々減少し続けています。原因の一つは海洋汚染で、土壌のヘドロ化が進み酸性化しているため、海中で浮遊していたアサリの“たね”が土の中で溶けてしまう。それを知った浅尾さんは、それなら土壌をアルカリ化して環境改善できたらいいのでは?との発想から、「ケアシェル」と呼ばれる牡蠣の貝殻を粉砕して作った人口の石粒を袋に入れ、試しに海岸に置いてみることにしました。



結果、袋の中に40~50個程度アサリが混ざっているのを発見!その後、浦村あさり研究会としてアサリの採苗試験や養殖試験を繰り返し、商業ベースでの新たなアサリ養殖技術の確立に大きく貢献を果たし、全国から注目を集めています。

「匠ではなく誰でもできる」が大切みんなで取り組む事が成功のカギに!

土壌の改善を想定して取り組みを始めたものの、ふたを開けてみれば、それよりも更に驚きの結果が出た……。

この瓢箪から駒のような収穫に、メディアも研究者たちも驚きました。画期的なアサリ養殖技術の確立に大きく貢献して時の人となった浅尾さん。実用新案を出して、権利を守ることは考えなかったのでしょうか?

「人間が原因で減らしたのなら、人間が増やす努力をすることで、より持続可能な世界を作れる。減りゆくアサリを増やすために、情報を共有し、具体的なやり方を教える取り組みをする方がいいと思ったんです。」と浅尾さん。

情報を公開して、実験を各所で行い、結果を教えあい、手を取り合うことが成功に繋がると考えたのだそうです。

「『匠ではなく誰でもできる』ということが大切で、それがシンプルでコスパがよければ、みんな取り組むようになるし、それが環境の改善に繋がる。『昔はよかったけど、減ったよなぁ……』では終わらせたくなかったんです。」とにこやかに熱く語ってくださいました。

損得よりも漁村を皆で盛り上げたい、やり方を教え合った方が品質も価格も守られるし、教えることで統一化を図ることもでき、イニシアチブを取ることにも繋がるという話に、視野の広さと心の豊かさを感じて、浅尾さんに憧れ仲間になりたい人は多いだろうなぁとカリスマ性を感じました。現在は、小学6年生と保育所の子どもたちの海洋教育に積極的に取り組んでいるそうです。

そしてこれからもワクワクし続けるために

浅尾さんが注目を集める理由、結果につながったプロジェクトはアサリの養殖技術の確立だけではありません。

地元で雑草扱いされるアカモクのブランド化と、地元の協力を得て手間のかかる加工の問題をクリアにし流通に乗せ、関わる人が助け合い共に潤うことに繋げたこと。前号で登場した浅井さんのキウイ畑の土壌改良に一肌脱いだこと。そして、生産者の顔が見えるレストランをうたう、志摩町越賀のあづり浜にある「Cloud 1 Dining 縁 —えにし—」への食材提供。と本当に各方面から頼りにされ、活躍していらっしゃいます。

取り組んだ事業だけでなく、浅尾さんご自身にとても興味を持ったので色々と質問させていただきましたが、その中で印象的だった言葉をいくつかご紹介させていただきます。

「自分が地元出身ではなかったから、すべてが新鮮で環境にワクワクしたし、知識がない分チャレンジできたのだと思う。」

「投資やギャンブルでは気が気でない。生み育てることで、ある程度計算ができるようになる。安定収入であることが大切。」

「これまで、大きな挫折というものはないけれど、つまづいたら新しいことを始めると決めているんです。」

「ワクワクする事しかしない。」

「ときめかないことはしない。」

「マインドが上がっていないとアイディアは出ないから、面白いことをしていたい。」

これらの言葉に、ピンチでも柔らかい発想でネクストチャレンジをし続ける浅尾さんのエネルギーと海の仕事ではありますが、地に足をつけた堅実さを感じることができました。今注目しているのは「漁業アクティビティ」漁村で遊ぶ(クリージング)とのこと。

これからも、浅尾さんが「わくわくすること」に注目していきたいと思います。

孝志丸かきっこ
住所 三重県鳥羽市浦村町1-12
代表取締役 浅尾大輔
営業時間 10:30~15:00

次回の「TOP’S RELAY」は株式会社On-Coの代表取締役・水谷岳史さんにお話を伺う予定です。

 

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